店舗什器を導入する際には、処分方法についての知識を持つことも大切です。素材によって処分・リサイクル方法が異なり、多くの場合は産業廃棄物として扱われます。そのため、一般ゴミとは異なる専門的な回収・処分の仕組みを利用する必要があります。
特に、コストだけを基準にし他処理業者を選ぶことは、最適とは言えません。不適切な業者に依頼した結果、不法投棄に繋がってしまったという事例もあります。
本記事では、販促什器を企画・製造する立場から、什器の捨て方・処分方法について解説します。また、近年高まっている循環型社会への意識を踏まえ、設計・活用・処分それぞれの段階で「3R」に視点を持つことの重要性についても触れています。
本記事が什器の捨て方に関する不安を解消し、持続可能な社会作りを意識するきっかけになればと思います。
什器の処分に悩むシーンとは
什器の処分が必要になるタイミングは、使われるシーンによって大きく異なります。導入の際に、捨て方を想定しておくことで計画的な準備が可能になります。
店舗什器/オフィス什器
閉店や移転、オフィスの統廃合といった大きな環境変化の際に処分するケースが多く見られます。一度に大量の廃棄物が発生しやすいのが特徴です。特にスチール製が多いため、多くの場合は産業廃棄物としての処理が必要になります。
販促什器
キャンペーン終了や季節の切り替え、棚卸などで処分することが一般的です。
短期間の使用を前提に作られるため処分頻度は高めですが、一回あたりの処分量は少なめです。処分量や規模によって最適な捨て方があります。少量なら一般廃棄物として扱える場合もありますが、大量の場合は産業廃棄物扱いとなり、専門業者への依頼が必要です。
什器の主な処分方法とそれぞれの特徴

ここでは、什器の捨て方に不安のある方、処分検討をしている方に向けて、代表的な捨て方と業者の特徴について詳しく解説します。
種類や量、材質によって最適な処分方法は異なるため、それぞれの方法メリット・デメリットを理解した上で選択することが重要です。
産業廃棄物処理業者に依頼する
産業廃棄物処理業者への依頼は、事業活動に伴って発生する大量の什器を処分する際の最も一般的な方法です。特に店舗の改装や閉店、大規模なレイアウト変更などで大量に処分する必要がある場合に適しています。
産業廃棄物処理業者を利用する最大のメリットは、法的に適正な処理が保証されていることです。事業系の廃棄物は法律により最適な処理が義務づけられており、許可を受けた業者に依頼することで、排出業者としての責任を果たすことができます。
料金に影響する要素として、廃棄物の種類や量が最も大きな要因となります。金属系の場合は重量があるため、重量単価での計算となることが多く、紙系では容積での計算となることが一般的です。処理する地域によっても料金は大きく変動し、都市部では料金が高くなる傾向もあります。業者によっても料金体系やサービス内容が異なるため、複数の業者から見積もりを取得して比較検討することをお勧めします。
買取業者に依頼する
状態の良い場合や有名メーカーの什器については、買取業者に引き取ってもらうことで、処分費用を抑えられるだけでなく、収入を得ることができる可能性があります。まだ使用できる什器を再び市場に流通させることで新たな什器の製造を減らし、資源の消費量を削減することにもつながります。
使用期間が短く、汚れが少ない、有名メーカー製、デザイン性の高い什器などは買取価値が高くなる傾向があります。
状態の悪いものや古いもの、特殊な仕様である場合は買取を拒否されることもあります。また、買取業者によっては、査定手数料や出張費用が発生する場合もあるため、事前見積サービスや買取可能なものかを確認するとよいでしょう。買取価格から諸費用を引いた結果、手元に残る金額が少なくなったり、場合によっては処分費用の方が高くなってしまう可能性もあります。
不用品回収業者に依頼する
不用回収業者と産業廃棄物処理業者は、必要な許可が異なります。不用品回収業者は家庭やオフィス、店舗からでる不用品を幅広く回収してくれる業者です。
回収物は、状態の良し悪しに関わらず、家具・什器・家電製品・雑貨など多岐にわたります。
最大の特徴は、スピーディーで柔軟な対応をしてくれる点です。電話やインターネットで予約をすれば、即日〜数日以内に回収に来てもらえるケースも多く、大掛かりな手続きが不要なため、手軽に利用できるメリットがあります。什器以外の雑多な不用品もまとめて回収してもらえるため、「オフィス移転や店舗閉鎖などでまとめて片付けたい」といったシーンにも適しています。
リサイクル業者に依頼する
リサイクル業者は、廃棄物をできる限り資源として再利用することを目的とした業者です。不用品回収業者が両方のサービスを提供していることもあります。
リサイクル業者の特徴は、可能な限り廃棄物を減らそうとする姿勢です。金属は金属リサイクル業者へ、紙類は古紙回収業者へというように、材質別に適切な処理ルートを持っている会社も多く、環境負荷の軽減に貢献できます。
持続可能な社会の実現に向けて3Rの理念を意識することはとても重要です。法令遵守の必要性やコスト面、日程の都合などを総合的に見た上で、最適な処分方法を選択することが環境への配慮と経済性の両立に繋がります。
店舗什器を処分する際の注意点
店舗什器の処分を業者に依頼する際には、トラブルを避けるためにいくつかの重要な確認ポイントがあります。特に「許可業者かどうかの見極め」は、安全な処分のために最も重要な要素です。産業廃棄物処理業者を利用する場合には、自治体のホームページなどで許可を得ている業者なのかを必ず確認しましょう。無許可業者に依頼してしまうと、不法投棄などのトラブルに巻き込まれる恐れがあり、排出業者である依頼主にも法的責任が及ぶ可能性があります。
また、費用の内訳についても注意が必要です。信頼できる業者は、収集運搬費用、処理費用、マニフェスト作成費用などを詳細に分けて提示します。逆に「処分一式」といった曖昧な見積もりしか出さない業者は避けるべきです。さらに、追加費用が発生する条件についても、事前に確認しておくことが大切です。
産業廃棄物処理マニフェストとは
文中に登場する「マニフェスト」とは、正式には“産業廃棄物管理表”のことを指します。廃棄物の種類・数量・処理方法を記録し、処理の各段階で確認を行うための制度です。ここで注意したいのが「排出事業者」です。これは什器を処分する依頼主を意味します。
依頼主には、マニフェストを通じて「廃棄物が最終処分まで適正に処理されたか」を確認する義務があります。マニフェストを発行しない業者や発行を渋る業者には依頼はできません。必ずマニフェストを発行している業者に依頼をしましょう。
マニフェスト制度についての解説
産業廃棄物を扱う業者には、マニフェスト制度の利用が法律で義務付けられています。この制度は、廃棄物の収集・運搬から最終処分までの流れを記録し、不法投棄や不適正処理を防ぐ仕組みです。環境省の資料では、次のように説明されています。
「産業廃棄物の処理が適正に行われるよう、排出業者が自ら確認するめに、廃棄物の処理の流れが記録・管理する伝票のことをマニフェスト(産業廃棄物管理表)といいます」
(出典:環境省「産業廃棄物のマニフェスト制度について」 )
この制度によって、事業者は委託先任せにせず、最終処分まで自ら責任を持って確認することが求められます。実務では、従来の紙マニフェストに加え、電子マニフェストの導入も進んでおり、処理のトレーサビリティ確保や実務作業の効率化に役立っています。
処分にかかる費用の目安と相場

什器の処分にかかる費用は、数量・材料・処分方法によって大きく変動します。適切な予算を立てるためには、あらかじめ費用の目安を把握しておくことが大切です。
1~10点程度の少量の場合は、不用品回収業者を利用するケースが多く、1点あたり1万円を超えることもあります。さらに出張費用として3,000〜10,000円程度が加算される場合が多いため、少量処分では割高になりやすい点に注意が必要です。
<費用の主な内訳>
・収集運搬費用
回収場所から処理施設まで運搬する費用。距離や搬出の運搬の難度によって金額が変動します。
・処理費用
実際の廃棄物処理にかかる費用です。材質や処理方法に応じて単価が設定されます。
・作業費用
解体や運搬にかかる人権費です。
・諸経費
マニフェストや契約書の作成費用、夜間・休日作業の割増料金などが含まれます。
これらの費用は業者によって呼び方や区分が異なる場合があります。総合的に検討するためにも、複数の業者から見積を取り、内容を比較することが最適な費用での処分につながります。
トラブルを避けるためのチェックリスト
・処分する什器の量と最適な処分方法を把握する
・委託業者の許認可を確認
・排出業者としての義務を把握する。
・複数の会社に見積りを取る。
・個人やブランドを特定する什器は、確実に情報を削除する。
これまでの項目を読んでいただけたならば、排出業者としての法的義務を理解することで、自然と委託業者の信頼性や許認可の有無を確認する重要性が見えてきます。現在、産業廃棄物の不法投棄による環境への影響には厳しい目が向けられており、自社のブランドの信頼を守る自衛のためにも、信頼できる業者を選択することは非常重要です。
また、現代社会では情報漏洩にも十分な警戒が必要です。什器に限らず、廃棄物を処理する際、個人情報やブランド情報が流出した場合、被害を受けるのは顧客であり、その結果、企業はイメージ低下や補填費用の発生など大きなリスクを負う可能性があります。
販促什器を処分する際には、商品価格やキャンペーン情報、店舗情報などを分別し、必要に応じてシュレッダーなどで判別不能にしてから処分することが望ましいです。
廃棄後のリスクまで見通したうえで、信頼できる業者を選びましょう。
材質別に処分とリサイクル特徴

先述した通り、持続可能な社会の実現に向けて3R(リデュース、リユース、リサイクル)の理念を持つことが重要です。“リデュース”では廃棄物の発生そのものを抑制し、“リユース”では使用可能な什器の再利用を促進し、“リサイクル”では資源として再利用を図ることで、環境負荷の軽減と資源の有効活用を実現できます。
産業廃棄物の処理においても、この3Rの考え方を基本として、可能な限り再利用やリサイクルを優先することが求められています。
材質ごとのリサイクル特徴
金属類(スチールやアルミ)の場合
金属類は溶解処理により新しい什器や金属製品に再利用されるため、高いリサイクル価値を持っています。状態によっては買取対象となる場合もあります。
紙素材(ダンボールや厚紙)の場合
比較的簡単に処分ができます。プラスチックやPETなどと組み合わさったものでも簡単に分別することができ、分別された紙素材は資源ゴミとして回収され、古紙になり再びダンボールや再生紙製品としてリサイクルされます。
木材の場合
無垢材の場合は、パーティクルボードなどに再利用され、家具などに生まれ変わります。MDFやメラミン化粧板などはそのままの再利用は難しく、細かく破砕加工されバイオマス発電所に燃料として利用され、焼却灰はセメントの原料として再利用されています。
アクリルの場合
アクリルは製造方法によってリサイクル方法が異なる特殊な素材です。回収後は混合アクリルとして扱われ、再び透明のアクリル板とするには品質低下を伴いやすいため、カラーパネルや充填剤などに生まれ変わることもあるようです。
リサイクルの大前提として、素材ごとの分別が非常に大事になります。販促什器を処分する際も、PETパーツを取り除いたり、シールのラッピングなどを剥がすなどして素材ごとに分けることで資源を3Rの輪に加えることができます。日常的な資源の分別の意識を高めましょう。
おすすめの紙製什器
販促什器はキャンペーンやプロモーション終了後、短期間で撤去・廃棄されることも多く、処分のしやすさが運用効率やコストにつながります。特に、環境配慮の意識が高まっている昨今では、リサイクルのしやすさを意識して選ぶ企業様も少なくありません。
紙やダンボール製は、金属やアクリル製と比べて軽量で、組み立てや撤去が容易である点が大きな強みです。金属やアクリルもリサイクルは可能ですが、分別や輸送に手間がかかり、処分工程が複雑化するケースがほとんどです。その点、紙製であれば、古紙回収の流れに乗せやすく、店頭現場での扱いやすさに優れています。
一般的な短期プロモーションは、数週間〜1ヶ月程度に限られ、その後は撤収作業が待っています。もしも什器が複雑な構造であれば、分解に時間がかかる場合は限られた人材にしか処分できないケースもあります。しかし、弊社の取り扱う紙・ダンボール什器は、パーツ点数を極力減らし、使用後はコンパクトに折りたためる設計になっています。
これにより、現場スタッフが短時間で分解、回収ができ処分の際もかさばらず効率的に対応できます。結果として、売り場担当者が本来注力すべき接客や、売り場づくりの時間を確保できるのです。
また、弊社の紙・ダンボール製は耐久性にも優れており、什器を傷めずPOPの差し替えも可能です。これによりリデュース(ゴミを減らす)という目的の面でも有効です。ここでは、弊社のオリジナル商材であるアイテムを2つご紹介します。
2秒で完成!自立式POPの2BY

2BYOはサイズや形状のバリエーションが豊富で、カスタマイズ性に優れたワンタッチ自立POPです。POPを本体のサイドに差し込んで取り付けることが可能なため、本体を痛めることなく差し替えることができます。これによって、プロモーションを跨いだ短〜中期間でも使用ができ、再製作のコストと資源の消費を抑えることができます。

一瞬で売り場の主役に!ワンタッチフロア什器CLAP

CLAPは、優れた耐久性を備えており、催事や期間限定ショップなどさまざまなシーンで活躍します。棚の数や高さ、全体のサイズなどは陳列する商品に合わせて設計できます。両面タイプのCLAPは1台で2つのプロモーションを展開することも可能です。詳細は下記ページをご覧下さい。
弊社の紙製・ダンボール製什器は、販促現場における合理性と環境負荷を両立する選択肢と言えます。見栄えと機能性、そして使用後の処分方法まで考慮された什器を選ぶことは、店舗運営をスムーズにするだけでなく、企業の社会的責任を果たす取り組みにもつながるでしょう。

店舗什器の捨て方・処分方法について
店舗什器の適切な捨て方を選ぶのは、法令遵守、コスト管理、環境保護の観点からも重要な課題です。捨て方の選択では、什器の素材特性を理解し、それぞれに適した処理方法を選択することが必要です。産業廃棄物処理業者への委託が最も確実な方法ですが、買取業者の活用や、処理施設への直接持ち込みなど、状況に応じた選択肢があります。重要なのは、適切な許可を持つ業者への依頼と、処理状況の確認です。
処分業者の選定では、相見積もりの活用が効果的です。複数の業者から見積もりを取得することで、適正な価格での処分が可能になります。ただし、価格だけでなく、処理方法の適正さ、業者との信頼性、サービス内容も総合的に評価することが重要です。
見積もりを比較する際は、処分費用、運搬費用、処理証明書の発行費用など、すべての費用を含めた総額で比較し、追加費用の削減や優先的な対応が期待できます。また、業者との信頼関係により、適切な処理の確実性も向上します。
業者との関係構築では、定期的な処理状況の確認、法規制変更への対応、新しい処分方法の提案など、継続的なコミュニケーションが必要になります。
什器の処分において、リサイクル意識の向上は持続可能な社会の実現に向けた重要な要素です。可能な限りリサイクルを前提とした処分方法を選択し、廃棄物の減量化に努めることが求められます。
また、什器の設計の段階からリサイクルを考慮することで、処分時の環境負荷を最小限に抑えることができます。企業としての社会的責任を果たすためにも、環境に配慮した選択と適切な捨て方を選ぶことが重要です。
このような取り組みを通じて、循環型社会の形成に貢献し、持続可能なビジネス活動の実現が可能になります。什器の処分が単なるコストではなく、企業の環境への取り組みを示す重要な機会として捉え、適切な判断を行うことが大切です。
まとめ
什器の適切な処分は、法的コンプライアンスの尊厳と環境負荷の軽減を実現するために重要な取り組みです。そこには排出業者の確認義務や委託先業者が法的な許可を得ているかをしっかりと確認することが重要です。
材質や数量、再資源化を考慮した最適な捨て方の選択と、信頼のおける処理業者へ委託することで、経済的にも法令遵守の面の両立を図ることができるでしょう。
当社では、販促企画の分野において環境負荷低減への取り組みをしたいという目的から始まるプロモーションのご相談もいただくこともあり、什器や販促ツールの製作において、資材の削減と再資源化を見据えたアイディアをご提供できます。お客様のCSRやSDGsの目標達成に貢献できるようご協力いたします。まずはお気軽にご相談ください。